「忠実に、ただ、忠実に。(削除済)」の続きになります。
なお、このエントリは津村の個人的見解であり、弊社サービス・社内事情には一切関係ありません。

プロでありつづける、という事

さて、僕はここ10年はプロと名乗って(名乗らざるを得なく?)生きています。
もちろん沢山失敗し、いい人・悪い人・いい案件・悪い案件・いろんな取引先に恵まれ、とても幸いなことに「津村さんと仕事したい」と言って頂ける事が今でもあり、とても嬉しいです。
そして、とても面白いことに、この世界は思っているより狭く、そして自分よりすごい人が沢山居ます。
そんな中で、インターネットの世界のプロとして生きていく事について、書いていこうと思います。


プロの定義とはなにか。

さて、そもそも論ですが。
一説には「商売としてカネを取ったらプロ」という説がありますが、これは僕の中では違います。
Professional、日本語でいう「職人」とは、「凄い結果を継続的に出し続けられる人」と僕の中では定義しています。
凄さとは、その一瞬とんがっていれば凄いのかもしれません。しかし、その一瞬を維持し続けなければいけないのです。
そして、そのプロフェッショナルというステータスは、会社ではなく個人に対して付与されるもの、と僕は思っています。
プロフェッショナルが技術に対して必ず対価を得るかどうかは別の話なので(もちろん安売りなどされたくもありませんが)、「カネを取ったらプロ」は厳密違うでしょう。「プロにロハ(タダ)で仕事を依頼する事は悪か否か」という話になるので、ここでは割愛します。

自分の代わりが居るのなら、その仕事を捨ててしまえ。

過去には「あなたの代わりを探している」と言った上司が居ましたが、その会社は程なくして自主的に去ったことがあります。「インフラエンジニアは居なくなった時にはじめて真の価値がわかる」とは、よく言ったものです。
よくエンジニアとして混同しますが、エンジニアとオペレータは仕事内容も目的も違います。エンジニアは技術を使い問題解決する事が仕事であり、オペレータはシステムの本質を知らなくても運用できる事が目的です。(こんな事を書くと、OS部の姪浜さんからラックマウントレールが飛んできそうですが。><;)
現実問題、後述しますが、その組織において「自分しか出来ない仕事」をするべきです。
現マイクロソフトの吉田パクえ(雄哉)氏のプレゼンでありましたが、「組織のトップ5%に仕事は集中する」という理論があります。
(※2013.04.12 マイクロソフト社主催「実践!パブリッククラウド活用術」より。スライドを探しましたが見つかりませんでした…。ゴメンナサイ。><;)

例えば自宅サーバかつ一人24x365で有償サービスを提供するのは、そのクオリティを担保する意味で、本当に大丈夫なのでしょうか。
これをIaaSで構築した場合、そのクラウドサービスに運用を任せ、システムを最適化することで、後々の運用コストを減らし、尚且つインフラレベルでの安定性を担保する事が可能です。
具体例として、オンプレミスのVMware ESXi上でLVS、LAMP、監視サーバ、シェルサーバを立ちあげてフレッツ回線で運用する事も可能ですが、AWSではVPC、ELB、EC2、RDSでそのまま代用可能です。
(もちろん、スキルアップの為には必要なトレーニングとして今でも十分通用するのですが。。。)

さて、実はこの「組織」が厄介で、現実問題、会社組織でも、技術者同士のコミュニティでも、主要な部分は特定の人物や組織が抑えています。例えばOSSのメーリングリストやWebBBS等を見ていても、特定の組織や特定の人物が主にレスを返している状況をよく見る事でしょう。
逆を言えば、「自分にしか出来ない事」を極めることで、何かしらのTOP5%に入ることは出来るのかもしれません。

インターネットの世界でプロであるということ

さて、TCP/IPと公衆回線により世界中のUNIXマシンが相互接続を始めた瞬間から、この世界は止まらないものとなりました。
以前は、例えば深夜バッチをISDN回線とテレホーダイの組み合わせで工夫する事により、通信コストを抑えながら安定運用をする事ができましたが、今の世界は24/365、フレッツ等の安価な回線によりインターネットVPN等を使用して暗号化通信する事が多くなりました。
そして、インターネットに携わるエンジニアは、各個人が24/365を意識する時代になりました。

さて、この24/365がクセモノで、障害対応に関わるエンジニアを疲弊させ、消耗させていく要因となります。
それは弊社のようなCIer/NIerにかぎらず、例えばソーシャルゲームデベロッパも例外ではありません。

もし、ただアラートメールを受信して対応する為だけに組織のトップエンジニアにアラートメールを送っているのであれば、それはすぐに止めるべきです。そして読みもしないアラートメールを受信しているのであれば、フィルタして削除するべきでしょう。
その為のMSPであり、24/365のシフト運用であり、そして「いざという時だけしか鳴らない携帯電話」が必要なのです。

とあるISPの運用体制

僕は上京して最初の2年間、とある大手ISPの運用部隊で、24/365及びリモート対応部隊を経験しました。
その際、明確にエンジニアの役割を分ける事により、効率的に運用を行いながら構築へもリソースを割く事が出来る環境を経験しています。

【24/365 MSP部隊】
シフトにより24時間複数人での監視体制。
SNMP等によるアラートの他、フレッツ回線障害、地震アラート等により、手順に従い状況を確認。
エンジニア部隊へ『電話』でエスカレーション。

【エンジニア部隊】
シフトにより一次連絡用携帯電話を持ち回り。
ノートPC・データカード所有。
シフト担当者は、電話により一次対応を受け付け、対応。
深夜対応後の場合、遅れて出社可。

これはあくまで一例に過ぎませんが、この体制の良いところとして、一次障害対応のエスカレーション先を構築も担当するエンジニアに設定することで、最小限の人的コストで一定の水準のエンジニアリングを24時間提供する事が可能です。
また、エンジニア部隊は人的リソースを予測可能な範囲で運用と構築を分担する事で、エンジニアの消耗を最小限に抑え、スケジュールも予測を立てる事が可能となります。

物理法則との戦い、ということ。

さて、エンジニアにとっての物理法則とは何でしょうか。
例えば人工衛星を作る場合はグラム単位で機体の重さの調整がされますので、余計な配線1本すら加えることはできません。(それをやってしまって上手く言ったのが、いわゆるMUSES-C「はやぶさ」ですが...)

他にも、様々な制約の中で僕らは仕事をしています。
・時間(万人に1日24時間しか時間は与えられない)
・資金(財布の中の現金の範囲でしか買い物はできない)
・ノートPC・携帯電話のバッテリー、電波状況
・個人的スケジュール(冠婚葬祭などなど...)

幸いな事に、通信回線はその制約の一部を取り払ってくれますが、それでも人同士のコミュニケーションコストは、対面>テレカン>メール、となっていまします。

そして、人間は何より食事と睡眠が無ければ生きていくことができません。
よく廃人のようなエンジニアに限って、食事と睡眠を削ります。そして僕もその一人です。

良いマネージャとは

さて、時に良いマネージャとは何でしょうか。
仕事のスケジュール「だけ」マネージメントする、仕事のタスク量「だけ」確認する、一方的に「タスクを投げる」だけ、「恫喝」するだけ。。。これらは、組織の95%(くらい)を占める、イケてないマネージャです。
では、良いマネージャとはなにか。一言でいうと、「人の嫌がる事を一手に担う人」だと思います。

例えば、以下のようなポイントを抑えると、良いマネージャとして成長するでしょう。
・お客様の環境の,ssh/configを、シェルサーバに予めまとめてくれる。
・様子を観て共有事項のWikiをまとめてくれる。
・部下の顔の血色や様子から、異常である場合に早めに業務量をコントロールする。
・部下の良きメンターとなる。

その為には、プレイヤーとしての十分な経験もさることながら、人間的な豊かさ、そしてメンタルヘルスに関する十分な知識が必要となります。
そして、最終的には「そのマネージャの言うことなら、部下が言うことを素直に聞いてくれる」という状況がベストだと思っています。

自分の心の『守り方』

さて、組織の95%のマネージャは、部下が壊れた時に初めて事態の悪化を意識します。
残念ながら人間は金や銅ののような安定した原子ではないので、コンピュータと同じく壊れてしまいます。

例)
ラック中段のコンソールを引き出したまま、10Uにサーバを設置していて、頭を縫うケガをする。
過剰な睡眠不足と炭水化物・糖分の摂り過ぎにより、内科的疾患を患う。
顧客と上司で異なる見解が示され板挟みになり、メンタルを患う。

特にメンタルの場合、この例では「ダブルバインド」と呼ばれる状態が発生し、とてもメンタルを消耗させる事となります。
その他、100点を満点として120点の答えをいつも求める、「あれでもない、これでもない」と提案を出させ続けた結果、最初に戻るか白紙になる等、いずれもよくある話ではありますが、これらは結果として部下のエンジニアを疲弊させ、長期的には貴重な人材を失うこととなります。

もちろんキレイ事を言うつもりはありません、時にはエンジニアに「頼む!死んでくれ!」と言う事もあります。この仕事15年も続けてれば、多分累積60日くらいは徹夜してるんじゃないでしょうか。
しかし、それが常態化している環境では、誰もそれを受け止める事は出来ないでしょう。

一時、リーチャビリティを『捨てる』ということ。

人間が一番苦手な事として、「捨てる」があります。

「顧客に捨てられたくない」
「与信に捨てられたくない」
「現金に捨てられたくない」
「上司に捨てられたくない」
「会社に捨てられたくない」

ハードウェア等の物理的なモノであれば減価償却が終わればさっさと捨ててしまえば良いのですが、上に書いたような目に見えないモノは捨てられず、しがみつく人が多々居ます。
そして、僕もその一人です。だいたい個人のPCやサーバを捨てるときは10台前後になる傾向があります。(ぉ
実は、iPhoneで、au Wifiを使いたいが為に4,000円ものパケット定額を契約していた事がありますが、300円のWifiに乗り換えてパケット定額を解約した事があります。
結果論ですが、これも「便利さを捨てたくない」というしがみつきでした。

さて、僕の場合。少しづつ施策を練ってはテストしているところではありますが、1つ捨てるものをご紹介しましょう。
それは、「リーチャビリティ」(到達可能性)です。

そもそも、人間24時間電話やメールをチェックする事など、不可能なのです。
しかし、ここまでの何かしらの要因で、それをせざるおえない実態となる場合もあるでしょう。
その結果として、人間として疲弊してしまう事があります。
ですので、そもそも携帯もネットも繋がらない状態にしてしまう事をオススメします。

また、僕は最近、自衛隊でメンタルヘルスを取り扱っている下園壮太さんの著書を読んでいるのですが、人は疲弊すると、徐々に回復に時間がかかるようになります。下園さんは著書の中で、それらを「2倍モード」「3倍モード」とし、疲労のレベルと回復にかかる時間の目安を挙げています。
以下の著書は、これらを知るのにとても良い本でしょう。下園さんは、「2倍/3倍モード」をはじめとする基礎的な話を、どの本でも丁寧に解説しており、メンタルヘルスに疎くとも理解しやすいように感じます。
 自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れを取る技術 

 がんばることに疲れてしまったとき読む本 

 大人の心の鍛え方 

「メンタルへ!」しなくても良い、メンタルの治し方

「メンタルへ!」は、ゆうメンタルクリニックさんの合言葉ですが(笑)、基本的に心療内科/精神科は投薬と診断書の発行が主なお仕事です。ゆうメンタルクリニックさんはカウンセリングもされていますが、基本的に心理士による傾聴カウンセリングなので、回復の手助けであるメンタルトレーニングなどをしてくれるわけではありません。
(関東IT健保の場合、健保のサービスで数回の傾聴カウンセリングを受けることが可能です。健保の冊子を御覧くださいませ。)

実はメンタルの回復は、outputする事ではなく、inputする事が有効です。つまり、「話す」「書く」「動かす」ではなく、「聴く」「観る」「読む」が割りと有効です。
よく「元気にならなきゃ!」と思ってジムに通ったり、ランニングしたり、書物したりする人も居ますが、逆に何も変わってなくて余計に消耗する場合が多かった気がします。

具体例を挙げましょう。
・映画を観る。(お好みのジャンルで。映画館とかオススメですよ。)
・図書館の本をカフェで読書(決して電車で読もうと思わないでください。人が多くて集中できません。)
・クラブイベントでゆるーく「ノって」くる。(後ろでまったりドリンク飲んでるくらいがちょうどいいです。)

また、これらの活動を通して、つい涙が出てきてしまうくらい疲弊していることもあります。これは意外と自覚が無いですが、自分を理解してくれる人に出会った時や、自分の本心で思っている事をメッセージとして伝えてくる作品と出会った時に起きる傾向があります。僕は主治医に一人から「涙活(るいかつ)」という言葉を教えてもらいましたが、あえてそういう作品に出会うのも良いかもしれません。

ほら、そろそろ携帯の電源を切ろうって思いません?(笑)

良き「メンター」を持つ。

さて、たまに「メンター制度あり」という会社があります。
メンターとは、一般的に新入社員等がその組織に慣れる為にアサインされる相談相手、というイメージがあります。現実そのように会社からアサインがなされ、上手く回っていない例もあります。

では、メンターはアサインされないと作れないかというと、そういうワケではありません。本来、メンターは自分が勝手に決めて良いものであり、それは組織内外に複数人でも構いません。(もちろん職務上のNDAなどありますが。)
僕の場合、社内外にメンターを3名見つけています。そして、自分の中で困った事の妥当性の検証などで意見を聞いたり聞かれたりしています。

メンターの見つけ方は様々ですが、社内と社外(できれば異業種)に1名づつ、一緒に問題について考えてくれる人を見つけるといいでしょう。あえて異業種と言うのは、自分の抱える問題の別のアプローチを知っている場合がある為です。

おわりに - コンピュータとの付き合い方

さて、原点に戻りましょう。
僕はさっき観てきた映画で(あえてタイトルは挙げませんが)、テーマとして「原点に戻って、あなたは何をやりたかったの?じゃあこれから何したい?」というメッセージを受け取りました。彼女たちは幼いながら、プロフェッショナルとしてのロールを全うしている一方、その途中で原点を見失っていたようです。

さて、僕らはなぜパソコンと出会って、そもそも何をしたかったんでしょうか。
そして、コンピュータを扱うことで職業として対価を得るポジションの一方、その本当にやりたかった事はできているんでしょうか。

僕の中では、やはりNo,できていませんでした。
少し前から活動の方向性を見誤っていて、捨てられるモノが捨てられず、逆に趣味を捨ててしまっていました。その分かれ目となった事は、あるショックな出来事から逃げる為にワーカホリックになった、そのまま評価されてしまった、という経緯があります。

「仕事と趣味が一緒」という人も居ますが、人は趣味に対していきなり目標と報酬が設定された瞬間に、大きいストレスとある種の誤解を始めます。
なのであえて言います。「仕事と趣味は似て非なるもの」です。

ですので、僕はこれから仕事と趣味をスプリットしていく方向に行くと思います。実は根底となる技術はあまり変わらないので相互に作用はすると思いますが、その為の手段として、セルフマネージメントを徐々に取り入れるでしょう。